Coffee Breaker

ひとやすみ、しませんか。

一人旅の話。鴨川・江ノ島篇

刻は2014年夏まで遡る。


僕は、疲弊していた。

 

純粋-ピュア-だった僕は
社会の荒波に飲まれ、
社会の人間の汚さを知り。
疲弊していた。
純粋-ピュア-だったので。

 

全て投げ出して引き籠る。
その直前で僕は。


「一人旅してみるか」


いつも通りの朝。
いつも通り昼迄のんびりし。

 

 

 

 


誰にも告げず、旅に出た。

 

 

 

 

 


一人旅初日

千葉県鴨川市某所。
岡山から6時間程。
まだ晩飯にありつけていない。


真っ暗やんけ。
コンビニも無いし。


そんな中、唯一灯りが点いていた店。
こんばんは、と入店。

 

 

木目調の店内、
カウンターのガラスケースには魚、
厳つい大将。


注文の品が届き、美味しいながら
殆ど無表情で頬張っていると。


「どこから来た?」


と話しかけて下さった。
まぁ、大荷物抱えてたらすぐ判るか。


軽い自己紹介と何気ないやりとりの後。
自分の悩み、打ち明けていない筈なのに。

 


見通したかの様な、道を示す言葉。
それは我慢を重ね、疲弊した心に刺さり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日僕は、泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回らない寿司屋のカウンターで。

今思えば酷過ぎる絵面である。
大将は生暖かい目で僕を見ていたが、
完全に自O志願者だと思われたに違いない。


一応、一人旅という弁解はしておいた。


「御馳走様でした」
大将に礼を言い、ホテルへ。

 

 


風呂に浸かり、部屋へ戻る途中。
受付の人に呼び止められた。


「お電話です」


ホテルどころか
旅の事すら誰も伝えていないのに?
いや、一人だけ知っているか。


「明日の午前中、ウチに来い」


先程まで聴いていた声色。
寿司屋の大将だった。


「わかりました」

「おう、それじゃおやすみ」

 

 

 


何だかわかんないけど、
明日が楽しみだなって。
久しぶりに、そう思った。

 

 

 

 


一人旅二日目

言われた通り寿司屋に出向く。
まだ開店すらしていない時間。


「おう、来たか」


カウンターに座り、
ちょっとまってろと言われ、数分。
目の前に置かれた皿には、西瓜(スイカ)。

 


まだ20年程度しか生きていないが、
間違いなく言える。

 

 

人生で、一番美味い西瓜だった。

 

 

「次は何処行くんだ?」

江ノ島です」

「そうか、良い旅にしろよ」


もう貴方と会えただけで充分良い旅です。
別れ際、大将と握手を交わす。
いかん、また泣きそうだ。


「御馳走様でした。絶対に、また来ます」


僕は大将を、彼の言葉を、この握手を。
生涯忘れないだろう。

 

 

 

気持ちを引き締め、
次の目的地、江ノ島へ。宿は鎌倉に取った。


待ち受ける新しい出会いに胸を踊らせ。
その日の夜。


僕は、外国人に囲まれていた。

 

それより少し前、昼過ぎに鎌倉到着。
重たい荷物を降ろす為、
すぐにチェックイン。


レンタサイクルを借りて、江ノ島を目指す。
マリンな風味の建屋や水着のチャンネーを
眺めながら走る。


片道一時間掛かった。
グーグルマップ上では
そんなに距離無いと思ったんだけどなぁ…


鎌倉に戻り、晩飯。
洒落た居酒屋に入るも特にイベント無く
宿に戻る。

 

これを読む貴方は、
ゲストハウスをご存知だろうか。
安値だが部屋を他の客とシェアする宿。
元は海外のバックパッカー向けらしい。


興味本位でこのゲストハウスを選んだ。
受付とカフェ&バー、二階がシェアルーム。


このバーにて軽食を食べながら
マスターの海外旅行話を聞いた。
ぶっちゃけあんま覚えていない。


そして気づいた事がある。
客は複数人いた。だが、


日本人が僕しかいねぇ。


同じく一人旅のイケメン外国人に
話しかけられるも英会話どころか
HelloとかXVIDEOS程度の単語しか
思い浮かばない。


マスターに通訳してもらいながら
なんとか意思疎通。
英会話できる人カッケェ。


無論、シェアルームなので
寝る際も外国人に囲まれている。


荷物大丈夫かな…とか
掘られないかな…とか心配しつつ、
サイクリング疲れで寝落ち。

 

 


一人旅三日目
チェックアウトを済ませ、東京へ。
ちなみに尻は無事でした。
僕の純潔-ピュア-は守られた。


渋谷、新宿、秋葉原をフラつき、
その後帰宅の途についた。

 

 

 

 

新幹線にて今回の旅を思い返す。
様々な人と出会い。
自分の世界が如何に小さいかを知った。
明日からまた頑張れるチカラを貰った。

 


自分探しの旅で自分を見つけた。
なんて事、聞いた事ないけど。
元より自分探しの旅ではないけど。

 


「一人旅、また行きてーなぁ」

 


流れる景色を横目に。
行き。真一文字に結んでいた口許は。
帰り。少しだけ綻んでいた。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


え?なんで鴨川と江ノ島を選んだかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一人旅の話。鴨川・江ノ島篇 完