追跡の話。出川哲郎篇
これを読む貴方はTV番組
「出川哲郎の充電させてもらえませんか?」
を知っているだろうか。
要約すれば
出川哲郎氏が電動バイクを駆り、
行く先々で充電させてもらいながら
目的地に向かう人情縋り旅である。
そして嫁はこの番組の大ファンであり、
僕も一緒に晩飯時、眺めている。
4月某日夕方。
「出川が…あの番組のロケで
岡山にきとる!らしい!!」
と、嫁がテンション高めな報告。
会いに行こうぜェ?と言わんばかりの
表情で僕の言葉を待つ。
ぶっちゃけ興味無…
くはないか。いや出川氏に興味は無いが。
ファンの方すみません。
僕の興味、それは
「断片的な情報を集め、移動先の分からない
人物に辿り着けるかどうか」である。
まぁ有名人なのでやり易くはあるが。
嫁と目的は違えどWin-Winな旅となる。
二つ返事で了承し、作戦会議を開く。
岡山の県北に位置する真庭市。
湯原温泉から津山へ向かう途中で
宿を取った、という情報をTwitterで得る。
情報が乏しく、尚且つ津山の土地勘が無い。
思い当たる名所と言えば鶴山公園。
津山城周囲の桜の名所であり、
それに伴う祭も開催される。
ここで出川氏を迎え討つ。
嫁曰く「出川は9時頃動き出す」
との事で、出川氏到着予想時刻に間に合う様
鶴山公園へ向かった。
任務開始。
道中も随時、彼の目撃情報を調べる。
ちなみに嫁は車酔いし易いのでドライバー。
僕が情報収集担当、息子が癒し担当。
9時を過ぎた辺りから目撃ツイートが
続々と投稿され始めた。
「動き出したみたいやわ」
Twitterの性質上、
ニュース気取りのアカウントでない限り
その情報がリアルタイムかどうか
判別するのは難しい。
なので、
女性且つ、画像付きツイートをしている
アカウントを優先する事にした。
何故か?
女性は情報共有が早い事、尚且つ
助手席に乗る事が多い。
即ち、直ぐにスマホを触れる環境の人が
多いと判断した為。(個人的意見)
車中でのすれ違いが多い
この番組のロケならではのやり方を選ぶ。
ふむ。
出川氏には目もくれず背景からヒントを探す。
大体読み通りのルートを通ってるな。
以降出川氏の有力目撃情報が得られず、
鶴山公園へ到着。
息子と遊びながら出川氏を待つ。
どこやねん。
だからどこやねん。
公園手前で充電タイムに入ったらしい。
屋台の軽食を頬張り、花見を堪能する。
その後、出発したとの情報を得る。
野次馬ギャラリーも増え、出川氏の到着を待つ。
…が、いつまで経っても来ない。
そして目に飛び込む、
出川氏が鶴山公園をスルーしたとの情報。
…やられた。
車へ戻り次はどこで迎え撃つか思案していると。
橋野食堂と稲葉氏の実家は目と鼻の先である。
成程、これは信憑性が高いのでは?
しかし、
情報を聞きつけた野次馬ギャラリー達により
渋滞を引き起こしている旨のツイートも。
目と鼻の先が裏目に出たか。
ならば迂回するのみ。
道は繋がっているのだ。
雑か。
スムーズに回り込みが出来、
稲葉氏の実家へ到着。
人多ッ!
道路の反対側にも野次馬ギャラリーが。
僕らも野次馬なのは内緒である。
そして待つ事30分
癒し担当の息子はずっと爆睡中。
出川氏中々出発しねぇな。
そんな事を思っていると。
「出川、大通りに出たらしいぞ!」
おっさんが騒ぎ出し、
連れと共に大通りに向かって駆けていく。
…が、誰が信じられようか。
でも僕と嫁は知っている。
彼が、
橋野食堂にいる人間と連絡を取っていた事を。
嫁と相談する。
「連絡取ってたし、
あのおっさんの方が信頼できそう」
嫁の判断で、大通りに出る。
…信号付近。あれは。
カメラのズーム機能を使い望遠鏡代わりに。
あの特徴的な原付。
間違いない。
で、
で、
で、
出川アアアァァアァァ!!!!
と井森さんと縫田D!!!
嫁もテンション上がりすぎて、
「ホアアァアァァー!!!」とか言ってた。
任務完了。
結局、僕達を含むおっさんを信じた
数人のみ彼を目撃し、
稲葉氏の実家にいた大勢のギャラリーは、
彼の姿を見る事は無かった。
余韻に浸りつつ帰投した。
そして。
今回の任務を経て、思う事。
「やっぱSNS信用出来ねェわ」
追跡の話。出川哲郎篇 完